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2004年12月04日
わが池袋再開発時代
□12月4日。ドカ買いを強いる街というのがある。ドカ買いを強いる街は人それぞれである。自分にとって今年前半まではその座に荻窪が長いこと君臨しておった。神保町とちがってうちからちょっと距離があるから、行くと折角来たんだからと貧乏性が暴発してドカドカ小銭を・そしてしばシヴァ大銭を(さ○ま書店に)落としてしまうのであった。しかし今年中盤の「大撤去時代」、すなわち度重なる不法駐輪に業を煮やした行政がおれおよびおれの自転車をマーキングし、毎週のように鬼の撤去を繰り返しそのたびおれはYOKOTAさんの両親に共感を示しつつ新宿御苑、音羽、西池袋など各地留置場を転々として回収して回ったけれど(これほど疲労感及び浪費感を共時的に味わった日々はない。おれメモに残してあるけど上げられん!NAZEならマークされてるから)、その折りに西池袋立教大手前の文庫ボックス大地屋書店を再発見した辺りから後に「池袋再開発時代」と呼ばれるピァリヤドが幕を開けたのである。それはおれの中で起こったルネサンス運動、つまり岩波集中読書運動と機を一にするがそれは偶然じゃない。文庫ボックスはさまざまな古典がたいてい揃っているからね。西口在住の時代に振り落とされた蓬髪の輩たちも真っ青になるくらいの紙袋ブル下げて池袋から帰還したその日のおれの姿、見せてあげたかったな。えらく神妙な顔して『パルムの僧院』とか買っちゃってんだぜ!こいついつ読むんだっての!(この後5分に亘るカッカ大笑、哄笑、失笑、嘲笑、そして意味深な銀微笑から成る一大変病死オーケストレーション)いやごめんごめん。それでおれは池袋に再び目を向けることにしたんだよ。思えば『ユリイカ』のナボコフ特集号――もちろん70年代に出た方だぜ――を買ったのも西池袋の古びた古書店だったし、光芳書店には後藤明生の初期の本を何冊か安く買わせてもらったし、いまでもちょこちょこ覗いてるし……。ああ、こんな話ばっかしてるから終わらねんだよ、こんな出任せのアホダラ経はちゃちゃっと終わらせて、おれは早く『白鯨』上巻と『キャッチ=22』上巻と『目玉と脳の大冒険』をこの上なく器用にローテしながら読んでいきたいんだよ。そういやおれ、この場所でいろいろ本について文章を書いてきたけれど、たぶん一度も使ってないんじゃないかな、「読み進める」って言葉。なんか大仰で持って回った感じで好きじゃないんですよ。なんか読書する自分に自己愛感じちゃってます、みたいな。ああでも使ってたら恥ずかしいな。1回とか10回とかじゃなくて、3回とかだったらイヤだな。信条のない感じがいやだ(ないけど)。
また脇道に逸れちゃった。で、「池袋再開発時代」を支えたのが「古書往来座」である。ここは久しぶりに興奮する古本屋だった。ジュンク堂が量と広さでもって読書子を閉じこめてしまうラビュリントスだとすれば、往来座は質と並んでる本のインターコミュニケーションでもっておれを閉じこめてしまう本屋だったって訳さ。文芸文庫やちくま文庫の在庫は都内でもトップクラスだろうね。木山捷平、江藤淳、松山巌、どころじゃなくていろいろ買ったはずだけど忘れちゃった。そういや今年男気を見せた河出文庫のモダンクラシックスも、文句ないくらい完璧に揃っていて、千駄ヶ谷には悪いけど、バロウズやカルヴィーノ、ここで揃えさせてもらいました(おれの漁場をこまかく書き立てるなと眉を潜める諸賢、あなたたちはお判りのはずですよ、往来座の文庫、一冊ずつよりもダブりや、3冊同じのが並んでいるケースのが多いことを。お目こぼしください)。ジュンク堂まで行けないくらい熱い奔流が尿道をせり上がってきた時も、快くトイレを貸してくれて、恩人でもある。
つまりこの店の発見をもって、おれの「池袋再開発時代」は終了し、以後「池袋大空費時代」が到来し、おれが年始に立てた誓い(覚えてるかな?)は瞬時に消滅した次第。往来座は東口を出て目の前の通りを高田馬場方面に行けば着く。駅からジュンク堂まで行く道を、もう5分くらい歩けば良い訳です。そういうことで池袋における往来座→ジュンクという最強のホットラインが完成した。それでこの日も往来座でドカ買いして、ジュンク堂の若島正のトークイベントに遅れてしまったんだよ。つまりここまでが前置きで続きは次回。
□11月末日。すっかり行きつけになってしまった小さい本屋でデイヴィッド・ロッジの新刊を発見する。○○の翻訳といえば我が国では××以外考えられないが、それに倣えばロッジの翻訳といえば高儀進しか考えられない訳だが(←適当なのを諸君のセンスで埋めて呉れたまへ)、高儀氏による訳者後書きをパラ読みしたら福田和也佐川光晴小谷野敦って人名が飛び込んできて慌てて本の表紙を確認したらこれ別に大塚英志の本じゃなかった(大塚グローバリズムに身を任せつつ抗って)んで安心して、どんな文脈かと再確認したらこの小説(『作者を出せ!』→amazon もうしおくれた)の主人公が『ねじの回転』のヘンリー・ジェイムズで(作中のジェイムズや登場人物の行動は、すべて史実に基づいたものだとのこと。その上で伝記物でない小説に昇華させているのだ)、我が国では地味な作家だけど実は最近ほうぼうでジェイムズファンがジェイムズについて言及しているんだよ、という指摘なのであった。よって新刊を置いたおれは、2~3日後にふらりと立ち寄った高田馬場のブックオフ(しかも狭い方)で『鳩の翼』上巻(講談社文芸文庫)(→amazon)を引き当てることになるのだった。凄ヅモ!要するに高儀進の老いてもお茶目でキュリアスなインテリジェンスと、解説がロッジ本の販促につながっていないところがとてもイカす、という話でした。
投稿者 かちゃくちゃ : 00:00 | コメント (716) | トラックバック



